牛が寒さに強い理由

北海道は牛を飼うのに適した気候です。しかし私が研究生をしていた2020年は、北海道でも大変な猛暑で、帯広でも32度とかの高温になりました。
牛舎でへばっている牛の写真を、友人がわざわざ送ってくれました。

放牧中の乳牛

 しかし、本州に比べれば北海道は圧倒的に有利です。九州では夏に繁殖が難しくなり(業界用語で「とまらない」という言葉を使います)、繁殖成績が下がっているとのことでした。

大分県のHPによれば、

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  一般的に大家畜の臨界温度は、乳牛で26℃~27℃、肉用牛では臨界温度は正確な高温領域は判っていないが、肉牛においては湿度60%の場合は気温22℃ですでに暑熱ストレスを受けるとされている。

したがって、この温度領域よりさらに高い状況の中では熱産生量が増大するため、食欲、増体等が減少し、飼料効果は低下する。

体温以上の光熱波が続くと致命的であり、平成22年は異常な猛暑によりかなりのへい死があった。

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とあります。深刻な問題です。

夏場の牛舎は扇風機などの温度上昇対策をしているところが多いですが、つなぎ牛舎の場合、逃げるところがないので、本当に気の毒です。アニマルウエルフェアもこのあたりから対策を提案してほしいものです。

 

 上は畜産大の農場です

やっと本題です。

では、牛が寒さに強いのはなぜでしょうか? 

牛にかぎらず、羊、ヤギ、鹿などの反芻動物(胃が四つあり、牧草などの繊部分を、第四胃の中に住む微生物の力を借りて消化する動物)は、いずれも寒さに強い動物なのです。

寒さへの強さを表す指標として、下限臨界温度を用いる。これは、寒冷環境下で体温を糾持するために、体に蓄えた栄養成分を燃やし始める環境温度のことで。この温度が低いほど、寒さに強いといえます。

単胃動物である豚(成豚)では、1215℃といわれるが、肥育牛や搾乳牛では一20℃以下、乳量の多い搾乳牛では-32℃)と報告されています。

その理由は二つあります。一つは多量の繊部分を発酵・消化する際に発生する代謝熱です。成牛の第四胃(ルーメン)はとても大きく、ドラム缶1本(200リットルほどの容量を持っています。

牛の腹部の大半は第1冐で占められており、微生物がたくさんの繊部分を分解し、たくさんの熱を発生します。
 もうーつの理由は、体を覆っている被毛と皮下組織(主に脂肪)による断熱は、断熱材(スタイロフォームなど)約20 mm厚に相当する。そのうちの約半分が被毛による断熱効果です。
。羊の場合は、皮下組織による断熱効果は牛よりも低いが、被毛の長さが40 mlになると、それだけで約20 mm分の断熱材に匹敵する効果があるのです。このように、牛や羊はまさしく北海に適した家畜ということができます。

【参考文献】北海道の気象と農業 北海道新聞

池田町の農家さんで・筆者

【参考文献】北海道の気象と農業 北海道新聞
似内惠子(獣医師・似内産業動物診療所院長))
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似内のプロフィール
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